春の日の青草原に すかんぽの芽立ちは赭し。広く 一むら
すかんぽの 低き芽出しは、沙原に 枯れ葉のごとく 捲きて散りたり
うらうらと 野に照る日かげ もはらなり。田へひくみぞの 寒き水おと
松蝉は すでにうまれて、山ゆする響きのとよみ 耳にさびしき
松山の松の梢鳴る夜を徹し 螢をとりて、水にはなたむ
井の面の 澄み澄みて、朝はしづかなり。水無月の水 こほらむとすも
水無月の望の夜。月は冴え冴えて、うつる隈なし━━。地にをどるもの
村の子は 徹夜 相撲ひて 明くる朝 草露ながら起き別るらし
麦を刈れ。火は燃えやすくなりにけり。夜ごろ 蛍のふえまさりつつ