和歌と俳句

釈迢空

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春の日の青草原に すかんぽの芽立ちは赭し。広く 一むら

すかんぽの 低き芽出しは、沙原に 枯れ葉のごとく 捲きて散りたり

うらうらと 野に照る日かげ もはらなり。田へひくみぞの 寒き水おと

松蝉は すでにうまれて、山ゆする響きのとよみ 耳にさびしき

松山の松の梢鳴る夜を徹し 螢をとりて、水にはなたむ

井の面の 澄み澄みて、朝はしづかなり。水無月の水 こほらむとすも

水無月の望の夜。月は冴え冴えて、うつる隈なし━━。地にをどるもの

村の子は 徹夜 相撲ひて 明くる朝 草露ながら起き別るらし

麦を刈れ。火は燃えやすくなりにけり。夜ごろ 蛍のふえまさりつつ