竿志鹿之心相念秋芽子之鍾礼零丹落僧惜毛
さを鹿の心相思ふ秋萩のしぐれの降るに散らくし惜しも
夕去野邊秋芽子末若露枯金待難
夕されば野辺の秋萩うら若み露にぞ枯るる秋待ちかてに
一日千重敷布我戀妹當為暮零所見
一日には千重しくしくに我が恋ふる妹があたりにしぐれ降る見ゆ
金山舌日下鳴鳥音谷聞何嘆
秋山のしたひが下に鳴く鳥の声だに聞かば何か嘆かむ
誰彼我莫問九月露沾乍君待吾
誰ぞかれと我れをな問ひそ九月の露に濡れつつ君待つ我れを
秋夜霧發渡凡〃夢見妹形矣
秋の夜の露立ちわたりおほほしく夢にぞ見つる妹が姿を
秋野尾花末生靡心妹依鴨
秋の野の尾花が末の生ひ靡き心は妹に寄りにけるかも
秋山霜零覆木葉落歳雖行我忘八
秋山に霜降り覆ひ木の葉散り年は行くとも我れ忘れめや
我袖尓雹手走巻隠不消有妹為見
我が袖に霰た走る巻き隠し消たずてあらむ妹が見むため
足曳之山鴨高巻向之木志乃子松二三雪落来
あしひきの山かも高き巻向の崖の小松にみ雪降りくる
巻向之檜原毛末雲居者子松之末由沫雪流
巻向の檜原もいまだ雲居ねば小松が末ゆ沫雪流る
足引山道不知白■■枝母等乎〃尓雪落者
あしひきの山道も知らず白橿の枝もとををに雪の降れれば
零雪虚空可消雖戀相依無月経在
降る雪の空に消ぬべく恋ふれども逢ふよしなしに月ぞ経にける
阿和雪千重零敷戀為来食永我見偲
沫雪は千重に降りしけ恋ひしくの日長き我れは見つつ偲はむ