和歌と俳句

柿本人麻呂歌集

前のページ< >次のページ

竿志鹿之心相念秋芽子之鍾礼零丹落僧惜毛

さを鹿の心相思ふ秋萩のしぐれの降るに散らくし惜しも

夕去野邊秋芽子末若露枯金待難

夕されば野辺の秋萩うら若み露にぞ枯るる秋待ちかてに


一日千重敷布我戀妹當為暮零所見

一日には千重しくしくに我が恋ふる妹があたりにしぐれ降る見ゆ


金山舌日下鳴鳥音谷聞何嘆

秋山のしたひが下に鳴く鳥の声だに聞かば何か嘆かむ

誰彼我莫問九月露沾乍君待吾

誰ぞかれと我れをな問ひそ九月の露に濡れつつ君待つ我れを

秋夜霧發渡凡〃夢見妹形矣

秋の夜の露立ちわたりおほほしく夢にぞ見つる妹が姿を

秋野尾花末生靡心妹依鴨

秋の野の尾花が末の生ひ靡き心は妹に寄りにけるかも

秋山霜零覆木葉落歳雖行我忘八

秋山に霜降り覆ひ木の葉散り年は行くとも我れ忘れめや


我袖尓雹手走巻隠不消有妹為見

我が袖に霰た走る巻き隠し消たずてあらむ妹が見むため

足曳之山鴨高巻向之木志乃子松二三雪落来

あしひきの山かも高き巻向の崖の小松にみ雪降りくる

巻向之檜原毛末雲居者子松之末由沫雪流

巻向の檜原もいまだ雲居ねば小松が末ゆ沫雪流る

足引山道不知白■■枝母等乎〃尓雪落者

あしひきの山道も知らず白橿の枝もとををに雪の降れれば


零雪虚空可消雖戀相依無月経在

降る雪の空に消ぬべく恋ふれども逢ふよしなしに月ぞ経にける

阿和雪千重零敷戀為来食永我見偲

沫雪は千重に降りしけ恋ひしくの日長き我れは見つつ偲はむ