御笠山野辺行く道はこきだくも茂り荒れたるか久にあらなくに
高円の野辺の秋萩な散りそね君が形見に見つつ偲はむ
御笠山野辺ゆ行く道こきだくも荒れにけるかも久にあらなくに
越の海の手結が浦を旅にして見れば羨しみ大和偲ひつ
石上乙麻呂
大船に真楫しじ貫き大君の命畏み磯廻するかも
作者不詳
物部の臣の壮士は大君の任けのまにまに聞くといふものぞ
大君の境ひたまふと山守据ゑ守るといふ山に入らずはやまじ
見わたせば近きものから岩隠りかがよふ玉を取らずはやまじ
韓衣着奈良の里の夫松に玉をし付けむよき人もがも
さを鹿の鳴くなる山を越え行かむ日だにや君がはた逢はずあらむ
神亀五年戊辰の秋八月み越道の雪降る山を越えむ日は留まれる我れを懸けて偲はせ
天平元年己巳の冬十二月の歌布留山ゆ直に見わたす都にぞ寐も寝ず恋ふる遠くあらなくに
我妹子が結ひてし紐を解かめやも絶えば絶ゆとも直に逢ふまでに