ひさかたの天の露霜置きにけり家なる人も待ちひぬらむ
玉守に玉は授けてかつがつも枕と我れはいざふたり寝む
我れのみぞ君には恋ふる我が背子が恋ふといふとは言のなぐさぞ
思はじと言ひてしものをはねず色のうつろひやすき我が心かも
思へども験もなしと知るものを何かここだく我が恋ひわたる
あらかじめ人言繁しかくしあらばしゑや我が背子奥もいかにあらめ
汝をと我を人ぞ離くなるいで我が君人の中言聞きこすなゆめ
恋ひ恋ひて逢へる時だにうるはしき言尽してよ長くと思はば
相見ぬは幾久さにもあらなくにここだく我れは恋ひつつもあるか
恋ひ恋ひて逢ひたるものを月しあれば夜は隠るらむしましはあり待て
まそ鏡磨ぎし心をゆるしてば後に言ふとも験あらめやも
真玉つくをちこち兼ねて言は言へど逢ひて後こそ悔にはありといへ
言ふ言の畏き国ぞ紅の色にな出でそ思ひ死ぬとも
今は我は死なむよ我が背生けりとも我れに依るべしと言ふといはなくに
人言を繁みか君が二鞘の家を隔てて恋ひつつまさむ
このころは千年や行きも過ぎぬると我れかしか思ふ見まく欲りかも
うるはしと我が思ふ心早川の塞きに塞くともなほや崩えなむ
青山を横ぎる雲のいちしろく我れと笑まして人に知らゆな
海山も隔たらばくに何しかも目言をだにもここだ乏しき