和歌と俳句

村上鬼城

土くれにはえておく小草かな

さみしさに窓あけて見ぬ虫の声

蟷螂に負け吼立つ小犬かな

蓑虫やはらはら散つて李の木

放生会二羽の雀にお経かな

二三尺月に吹上ぐる吹井かな

さして一間の家でありにけり

待宵やふところ紙の仮つづり

待宵やすすきかざして友来る

今日の月馬も夜道を好みけり

十五夜やすゝきかざして童達

十五夜の月に打ちけり鱸網

明月や海につき出る利根の水

藻を刈つて淋しき沼の無月かな

川上は無月の水の高さかな

を洗うて月に白さかな

芋掘の拾ひのこしし子芋かな

十六夜のだしぬけ雨に降られけり

月さして古蚊帳さむし十六夜

淋しさや閨にさし入る居待月

糸瓜忌や俳諧帰するところあり

糸瓜忌や秋はいろいろの草の宿

晴れてはてなく見ゆる泥田かな