謡きこえかげろふ来る夜決意成る
鳴く蝉は海へ落つる日独り負ひ
向日葵やガード都の門をなす
花に露十字架に珠数煌と掛かり
正午の露消え行進曲の鳴り響き
露消えし鏡に時世ありありと
露に歎く童男童女の声に帰り
梅雨も人も葬りの寺もただよすが
炎天の手の小竹凋る葉を巻きて
青稲の碧羅の空も茅舎以後
伏目の茅舎芭蕉葉面にあらはるる
芋の葉の干たる撫で撫づ天馬いづこ
紅白の供飯の睡蓮茅舎ねむれ
灼け灼けし日の果電車の灯もかがやか
街燈更けて夏草芝居の草のさま
ちちろ鳴きマネキン人形それの子伴れ
若者みな去ににはかにねむき星月夜
見つむれば訝かる吾子に秋の風
眼前は日照る寒気と希望のみ
心赤し炭火ゆ灰を削ぎ落し