外むきに岩にとまりて秋の蝶
日向飛ぶ旅装束の蜻蛉居て
初野菊仮想の女人みなあはれ
里近し野菊の下に土鼠の土
村の道家疎になれば青胡桃
青胡桃村家入口向きむきに
日と風の通ひて胡桃茂り実のり
野の光胡桃のしげり南厚く
向日葵は連山の丈空へ抽く
山の陽は木と水の友向日葵澄む
木の下に赤子寝せあり鷹舞へり
秋の家土間に伏目の馬母子
古語にいふ太腹平頸秋の馬
片腰さげて尾をふる仔馬朝の虫
母のそば仔馬は男秋炉燃ゆ
秋炉赤し仔馬母より細面
馬具とれし西日の母へ仔馬寄る
馬と寝に来し旅人へ秋の蠅
秋の蠅耳打ちをしに目のぞきに
夜長馬母子の刻印額に白し
馬と寝る屋の上に高嶺天の川
仔馬ハタと転び寝入りぬ虫の声
窓の銀河仔馬のいびき高らかに
稲妻や馬の乳房は胸に在らぬ
いくたびか母馬めざめただ夜長