侮れれても寒い日だ
また逢ふまでの霜をふみつつ
二三歩ついてきてさようなら
親一人子一人しぐれ日和で
お寺の大銀杏散るだけ散つた
しぐるるやラヂオの疳高い声
ふけてアスフアルトも鈴蘭燈もしぐれます
暮れ残る頂の枯すすき
小春日有縁無縁の墓を洗ふ
しんせつに教へられた道の落葉
つめたい雨のうつくしい草をまたぐ
山茶花散つて貧しい生活
落葉うづたかく御仏ゐます
水仙一りんのつめたい水をくみあげる
あるけばあるけば木の葉ちるちる
柵をくぐつて枯野へ出た
明日の網をつくらうてゐる寒い風
別れきてからたちの垣
あてもなくさまよう笠に霜ふるらしい
餅搗く声ばかり聞かされてゐる
師走のポストぶつ倒れた
師走夕暮、広告人形動く
どしやぶり、正月の餅もらうてもどる
暮れてまだ搗いて餅のおいしからう
鐘が鳴る師走の鐘が鳴りわたる
街は師走の広告燈の明滅
寒い風の広告人形がよろめく
葉ぼたん抜かれる今年も暮れる
今年も今夜かぎりの雨となり