初富士や浮島ヶ原ひろびろと
初富士も藁屋もうつる水田かな
泣きぞめの子供の数もめでたけれ
年玉を美しき子におくりけり
境内に羽子の子のゐて静さよ
板撲つて花火のごとし雪雫
耳を打つひらひら雪や夜の橇
提灯を借りて尚遣る橇に在り
竈の火燃えてをり山焼けてをり
猫の恋老梅幹を横ふる
畑垣を繕ふ竹のもたらさる
マスクして見舞の客は吉右衛門
温泉の里の一つの寺の彼岸かな
目を向ける方に出てをり畑打
限りなき野の一ところ焼いてをり
山吹に行けば山路となるばかり
王宮のあとの花壇の牡丹かな
日焼しぬ北緯四十九度といふに
郭公や白樺林行き尽きず
夏草や匪賊が通ふ路を行く
茹でゝ喰ふ興安嶺の夏蕨
わが歩りく蒙古の土のみちをしへ
試めし打つ銃のこだまや夏木立
みじか夜や手とゞくごとき北斗星
孫弟子と自らゆるす獺祭忌
秋草や駅ごとにある戦跡記
雁金の南するや仰ぎけり
雁金や森々とある松花江