和歌と俳句

新古今和歌集

高倉院御歌
白露の玉もて結へるまさのうちに光さへ添ふとこなつの花

前太政大臣
白露のなさけ置きけることの葉やほのぼの見えし夕顔の花

式子内親王
黄昏の軒端の荻にともすればほに出でぬ秋ぞ下にこととふ

前大僧正慈円
雲まよふ夕べに秋をこめながら風もほに出でぬ荻のうへかな

後鳥羽院御製
山里のみねのあまぐもとだえしてゆふべ涼しきまきのした露

入道前関白太政大臣
岩井汲むあたりの小笹たま越えてかつがつ結ぶ秋のゆふ露

宮内卿
片枝さすうをふの浦梨はつ秋になりもならずも風ぞ身にしむ

前大僧正慈円
夏衣かたへ涼しくなりぬなり夜や更けぬらむゆきあひの空

壬生忠岑
夏はつる扇と秋のしら露といづれかまづはおきまさるらむ

貫之
みそぎする河の瀬見れば唐衣ひもゆふぐれに波ぞたちける