防人に行くは誰が背と問ふ人を見るが羨しさ物思ひもせず
天地の神に幣置き斎ひつついませ我が背な我れをし思はば
家の妹ろ我を偲ふらし真結ひに結ひし紐の解くたく思へば
我が背なを筑紫は遣りて愛しみえひは解かななあやにかも寝む
馬屋なる縄絶つ駒の後るがへ妹が言ひしを置きて悲しも
荒し男のいをさ手挟み向ひ立ちかなるましづみ出でてと我が来る
笹が葉のさやぐ霜夜に七重着る衣に増せる子ろが肌はも
障へなへぬ命にあれば愛し妹が手枕離れあやに悲しも