和歌と俳句

万葉集防人歌

昔年の防人が歌
主典刑部少録正七位上磐余伊美吉諸君抄写
兵部少輔大伴宿禰家持に贈る

防人に行くは誰が背と問ふ人を見るが羨しさ物思ひもせず

天地の神に幣置き斎ひつついませ我が背な我れをし思はば

家の妹ろ我を偲ふらし真結ひに結ひし紐の解くたく思へば

我が背なを筑紫は遣りて愛しみえひは解かななあやにかも寝む

馬屋なる縄絶つ駒の後るがへ妹が言ひしを置きて悲しも

荒し男のいをさ手挟み向ひ立ちかなるましづみ出でてと我が来る

笹が葉のさやぐ霜夜に七重着る衣に増せる子ろが肌はも

障へなへぬ命にあれば愛し妹が手枕離れあやに悲しも