雪の色を奪ひて咲ける梅の花今盛りなり見む人もがも
我がやどに盛りに咲ける梅の花散るべくなりぬ見む人もがも
梅の花夢に語らくみやびたる花と我れ思ふ酒に浮かべこそ
松浦川川の瀬早み紅の裳の裾濡れて鮎か釣るらむ
人皆の見らむ松浦の玉島を見ずてや我れは恋ひつつ居らむ
松浦川玉島の浦に若鮎釣る妹らを見らむ人の羨しさ
大和道吉備の児島を過ぎて行かば筑紫の児島思ほえむかも
ますらをと思へる我れや水茎の水城の上に涙拭はむ
万葉集・巻第三・挽歌
我妹子が見し鞆の浦のむろの木は常世にあれど見し人ぞなき
万葉集・巻第三・挽歌
鞆の浦の磯のむろの木見むごとに相見し妹は忘らえめやも
万葉集・巻第三・挽歌
磯の上に根延ふむろの木見し人をいづらと問はば語り告げむか
万葉集・巻第三・挽歌
妹と来し敏馬の崎を帰るさにひとりし見れば涙ぐましも
万葉集・巻第三・挽歌
行くさにはふたり我が見しこの崎をひとり過ぐれば心悲しも
万葉集・巻第三・挽歌
人もなき空しき家は草枕旅にまさりて苦しくありけり
万葉集・巻第三・挽歌
妹としてふたり作りし我が山斉は木高く茂くなりにけるかも
万葉集・巻第三・挽歌
我妹子が植ゑし梅の木見るごとに心咽せつつ涙し流る
万葉集・巻第二・雑歌
我が盛りまたをちめやもほとほとに奈良の都を見ずかなりなむ
万葉集・巻第二・雑歌
我が命も常にあらぬか昔見し象の小川を行きて見むため
万葉集・巻第二・雑歌
浅茅原つばらつばらにもの思へば古りにし里し思ほゆるかな
万葉集・巻第二・雑歌
忘れ草我が紐に付く香具山の古りにし里を忘れむがため
万葉集・巻第二・雑歌
我が行きは久にはあらじ夢のわだ瀬にはならずて淵にしありこそ