ゐなみのや笠の蠅追ふ秋の風
旅人となりにけるより新酒哉
清てるや一葉に沈む新豆腐
聖霊や草の香うつす女郎花
おくり火やなき玉鉾の案内者
源平香手向のはたや川せがき
馬に乗衣かつぎあり金毘羅会
買勝やたからの市の国みやげ
あの里に角とぎ鹿のこもりけん
霧と波とに蚯蚓鳴らん芥川
沙魚飛んで船に食たくゆふべかな
はねる程哀れなりけり秋鰹
浪人や胡桃をまはす鳥にだも
渋柿もたのみあるみぞ沢清水
芙蓉の香苔のみづらにこぼれけり
弓の木の久しき柾のかづら哉
花は根にもと荒の萩や土竜
芦の花折りて船出の祓せん
朝顔や少しの間にて美しき
槿の実をとる人のゆふべ哉
露草に染て通らん古油単
はらむ稲は子安の地蔵ぼさつ哉
馬買てつなぐまがきや稲の花
盆粟の稲に出て星の逢夜かな
瓜かれていつ迄草の西瓜守
自然薯を釣せぬさきに宿鳥哉