和歌と俳句

椎本才麿

ゐなみのや笠の蠅追ふ秋の風

旅人となりにけるより新酒哉

清てるや一葉に沈む新豆腐

聖霊や草の香うつす女郎花

おくり火やなき玉鉾の案内者

源平香手向のはたや川せがき

馬に乗衣かつぎあり金毘羅会

買勝やたからの市の国みやげ

あの里に角とぎ鹿のこもりけん

霧と波とに蚯蚓鳴らん芥川

沙魚飛んで船に食たくゆふべかな

はねる程哀れなりけり秋鰹

浪人や胡桃をまはす鳥にだも

渋柿もたのみあるみぞ沢清水

芙蓉の香苔のみづらにこぼれけり

弓の木の久しき柾のかづら哉

花は根にもと荒の萩や土竜

芦の花折りて船出の祓せん

朝顔や少しの間にて美しき

槿の実をとる人のゆふべ哉

露草に染て通らん古油単

はらむ稲は子安の地蔵ぼさつ哉

馬買てつなぐまがきや稲の花

盆粟の稲に出て星の逢夜かな

瓜かれていつ迄草の西瓜守

自然薯を釣せぬさきに宿鳥哉