ひぐらしにしばらく雨のふりいそぎ
縁さきのたゞちに南瓜畠かな
秋くさを下げしわが手にさす日かな
萩咲くや引つ越すはなしきまりかけ
十三夜はやくも枯るゝ草のあり
手拭もおろして冬にそなへけり
汁の味あだ鹽辛し一葉落つ
盆の月出たれどいまだ沖暗き
蚊やり粉のしめりてもえず盆の月
ひぐらしやしほどきわたる滑川
鮎むしる箸も秋めく日なりけり
鎌倉の秋はじめての芙蓉かな
古本屋素人に出来鳳仙花
あと追ひて泣く子を賺す野分かな
秋の夜の下げて貧しき灯なりけり
しめきりし障子のうちの夜長かな
八つ橋のなごりをかしき芒かな
芒の穂ばかりに夕日残りけり
露深しとぎれとぎれにみたる夢
なく蟲のたゞしく置ける間なりけり
滑川海よりつゞく無月かな
月の雨ふるだけふると降りにけり
停車場にけふは用なきとんぼかな
さわたりの石にひそめるとんぼかな
秋袷酔ふとしもなく酔ひにけり
ひやゝかやたまたま月の七日ほど
蓮の葉のからからに秋晴れにけり