葉桜や法師のなりのいさぎよく 喜舟
葉桜や豊かに垂れし洗ひ髪 鷹女
葉桜の月に笛吹く畳かな 石鼎
葉桜に明るき月の見えにけり 石鼎
白秋
朝眼には 若木櫻の 葉ざくらの 梢葉の紅の 裏そよぎつつ
枝をさしのべて葉ざくら 山頭火
葉桜となつて水に影ある 山頭火
握つてくれた手のつめたさで葉ざくら 山頭火
いちにち石をきざむや葉ざくらのかげ 山頭火
葉ざくらとなつてまた逢つた 山頭火
葉桜や白粉つけてさびしけれ 青邨
葉櫻やいよいよ強き雨の中 万太郎
葉櫻にこめたる闇のふかきかな 万太郎
ガソリンがにほひ葉櫻蕚をふらす 悌二郎
日々通るいまは葉ざくらとなりし道 貞
葉桜や流れ釣なる瀬戸の舟 久女
葉桜を吹く風幹をつつみたる 石鼎
葉桜の繁り枝のべし屋敷かな 石鼎
葉桜の二枝のなかをのぼる月 石鼎
葉桜の葉にかかりつつ月明し 石鼎
読書の餓ゑ葉桜日増し公園かくす 草田男
葉桜の中の無数の空さわぐ 梵
葉桜や寺とおぼしき庭に出づ 占魚
葉桜にてらてら風の光る朝 占魚
葉ざくらに人こそしらね月纖そる 蛇笏
葉桜の闇へつづける昼の路地 林火
葉桜や蓑きて通ふ湯治客 普羅
葉ざくらの日箭眼まぐるし坂に佇つ 占魚
葉桜がつくれる蔭に入らばやと 誓子