秋耕
秋耕にたゆまぬ妹が目鼻だち 蛇笏
秋耕や胡藤黄なる遠並木 橙黄子
秋耕やあらはの墓に手向花 秋櫻子
秋耕や遠畝廻りぬ石たたき 秋櫻子
秋耕や富士をさへぎる山もなく 秋櫻子
秋耕の道を返して父帰宅 青畝
ばさばさと秋耕の手の乾きけり 蛇笏
秋耕のいちまいの田をうらがへす 素逝
秋耕の具や土の上に忘れられ 誓子
秋耕の刻をたがへず茶のけむり 蛇笏
秋耕の遠くよりきて泉掬む 蛇笏
焼跡に秋耕の顔みなおなじ 三鬼
秋耕のおのれの影を掘起す 三鬼
打鎮む山を央に秋耕す 蛇笏
耕せり大秋天を鏡とし 三鬼
父と子の形同じく秋耕す 三鬼
秋耕の夜の手に辞書の紙うすし
秋耕音なしただ汗の背と鴉の黒 龍太
秋耕の馬のししむら土と照り 爽雨
蝶低し秋耕の鍬ひくければ 爽雨