カンバスに木々のほむらや秋の蝉
掻き合す襟たよりなし萩の風
山葡萄這ひのりもぎぬ蔓ながら
紅葉せし葉につゝみけり山葡萄
一幕を残して出でぬ盆の月
虫の月かそけくかゝる大樹かな
帯にふれて蓼冷かにゆれにけり
木犀のこぼるゝ石に憩ひけり
萩咲くやまだ縫物に親しまず
庭の萩句の母にそふ女の子
話声萩のうしろのあたりより
夕萩にまとふ羽織の匂ふかな
十六夜の月見そなはす御仏
芒の香こもりて雨の十三夜
秋風に草枯れへりしところかな
初秋や舟子が着たる白襦袢
初秋の月大川に光りけり
うつり来しとなり静かや虫の夜
裏門に別れし秋の夕べかな
暗がりを出て来し人や月の道
鈴なりの銀杏ながめ雨やどり
いでたちのひとしき僧や花野ゆく
主従して秋の焚火の二たところ
椎の実や落葉の上に落ちし音