青葉冷万太郎忌の夜のネオン
夜を濡るるレール百条五月雨
青嵐住みなすといふ日数かな
バラ散るや己がくづれし音の中
奏でゐる清水の音をみだし掬む
また次の想ひ満ち来て滴れる
ほととぎす金色発す夕富士に
島影も疾し蝶も疾し夏館
更けにけりいつよりしづかなる火蛾ぞ
鬼灯市雨雲しかと遠ざけし
棕櫚の花港の風も忘れじよ
炎天の機械も何かつかさどる
したがへる船影も夏溶鉱炉
アンカレヂ毛皮売場の扇風機
夏潮にアンデルセンの小さき窓
修道女読む緑蔭よわれは旅
煉瓦館日除真紅に老給仕
夏草や城砦にして獄なり
夏の月廃墟一翼人暮らす
千の匙揃へる音に明易し
蓮浮葉失ふものもなく満ちし
石段の一つ一つの青葉冷
法燈の焔の音か遠蝉か
田植すみ山河安らふ出羽の道
青くるみ最上川幅拡げつつ