狐火の進める方へ歩みゐし
狐火や便りの墨を濃にすれば
土を出て蕪一個として存す
水涸れし杭の細りに舫ふなり
かげりなき冬青空にたのみあり
火鉢欲しいつまで着るぞ里の紋
霜白し独りの紅茶すぐ冷ゆる
水仙のこち向く花の香をもらふ
水仙や灯影はせめて加ふべし
毛布一枚加へたる夜の機嫌かな
北窓をふさぎ己をかくしけり
冬苺美しき皿残しけり
橋裏へ水の暗さよ年迫る
寒玉子ともかくも灯を明うせよ
日向ぼこ温しといへば母に似む
茶の花に便り一行など惜しむ