和歌と俳句

中村汀女

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狐火の進める方へ歩みゐし

狐火や便りの墨を濃にすれば

土を出て蕪一個として存す

水涸れし杭の細りに舫ふなり

かげりなき冬青空にたのみあり

火鉢欲しいつまで着るぞ里の紋

白し独りの紅茶すぐ冷ゆる

水仙のこち向く花の香をもらふ

水仙や灯影はせめて加ふべし

毛布一枚加へたる夜の機嫌かな

北窓をふさぎ己をかくしけり

冬苺美しき皿残しけり

橋裏へ水の暗さよ年迫る

寒玉子ともかくも灯を明うせよ

日向ぼこ温しといへば母に似む

茶の花に便り一行など惜しむ