真つ白く冬木はじきし斧入るる
わが波の一つ一つに都鳥
日脚伸ぶ母をいたはる仮住に
とどまれる陽に花あげて芦枯るる
葱屑の水におくれず流れ去る
呼鈴の紐のありかや夕時雨
北風を来しとは誰も語らずに
時をりに夜風は強し聖樹市
クリスマスツリー地階へ運び入れ
真直ぐに冬木にまじり煙出
荒波の間近に蒔きし冬菜かな
冬波の残せし汐も馳せもどる
木枯の過ぎゆく末の音聞ゆ
一杯のヂンの酔ある火鉢かな
都鳥はまたたつ鳥や懐手
われとわが冷えてゐし身に懐手
霜覆ひしてあるものをたしかめし
坂寄せて来て歳晩の町となり
小さき子を歩ませんとし歳の市
北風の奪へる声をつぎにけり
大樫の思ひつきては雪払ふ
残るもの木賊の青や寒雀
夕刊の香やあたたかく時雨けり
小火鉢に古き港の話かな
凍て雲のなほ去りがたく船黒く
冬の灯の浅草のどの道来しや