和歌と俳句

金葉和歌集

江侍従
もみぢばをたづぬる旅にあらねども錦をのみもみちきたるかな

藤原伊家
谷川にしがらみかけよ竜田姫みねの紅葉に嵐ふくなり

藤原伊家
ははそ散る岩間をかづく鴨鳥はおのが青羽も紅葉しにけり

前皇后宮美作
山里の秋のけしきも見ぬ人に来てだに語れ露もおとさず

藤原長能
いづくにか駒をとどめむ紅葉ばの色なるものは心なりけり

大納言経信
大井川いはなみたかし筏士よ岸の紅葉にあから目なせそ

修理大夫顕季
小倉山みねの嵐の吹くからに谷のかけはし紅葉しにけり

源俊頼朝臣
音羽山もみぢちるらし逢坂の関の小川に錦おりかく

中原経則
明日よりは四方の山邊に秋霧の面影にのみたたむとすらむ

源師俊朝臣
草の葉にはかなく消ゆる露霜をかたみに置きて秋のゆくらむ

大納言公任
いづかたに秋のゆくらむ我が宿に今宵ばかりの雨宿りせよ