とし子
かりにのみ くるきみまつと ふりいでつつ なくしかやまは 秋ぞかなしき
中納言家持
あきはぎの うつろふをしと なくしかの こゑきくやまは もみぢしにけり
鎌倉右大臣実朝
雲のゐる こずゑはるかに きりこめて たかしのやまに しかぞなくなる
前大僧正慈円
むべしこそ このごろものは あはれなれ 秋ばかりきく さをしかのこゑ
前参議経盛
峯になく しかのねちかく きこゆなり もみぢふきおろす 夜半のあらしに
八條院高倉
わがいほは をぐらのやまの ちかければ うき世をしかと なかぬひぞなき
權中納言実守
おほえやま はるかにおくる しかのねは いくのをこえて つまをとふらん
六條入道前太政大臣頼実
おほかたの あきをあはれと なくしかの なみだなるらし のべのあさつゆ
正三位知家
さをしかの あさゆくたにの むもれ水 かげだに見えぬ つまをこふらん
如願法師
さをしかの なくねもいたく ふけにけり あらしののちの やまのはの月
大弐三位
いづれをか わきてをるべき 月かげに 色見えまがふ しらぎくの花
返し 權大納言長家
月かげに をりまどはるる しらぎくは うつろふいろや くもるなるらん
天暦御製
かげ見えて みぎはにたてる しらぎくは をられぬなみの はなかとぞみる
右兵衛督公行
月かげに いろもわかれぬ しらぎくは こころあてにぞ をるべかりける
按察使公通
月かげに かをるばかりを しるしにて いろはまがひぬ しらぎくの花
鎌倉右大臣実朝
ぬれてをる そでの月かげ ふけにけり まがきのきくの はなのうへのつゆ
入道二品親王道助
わがやどの きくのあさつゆ いろもをし こぼさでにほへ にはのあきかぜ
權大納言忠信
なくなくも ゆきてはきぬる はつかりの なみだのいろを しる人ぞなき
鎌倉右大臣実朝
わたのはら やへのしほぢに とぶかりの つばさのなみに あきかぜぞふく
如願法師
月になく かりのはかぜの さゆる夜に しもをかさねて うつ衣かな