和歌と俳句

若山牧水

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むきむきに 木々の茂りて 静かなり 椎は椎の木 樫は樫の木

葉ばかりに 花のとぼしき 山桜 咲きまじりたり 椎の木の間に

なにならぬ 花の匂ぞ にほひたる 雑木の山の 春の日向に

浅川の せせらぎ澄みて 流れたり うららけきかも の声

この春に まだめづらしき 河鹿なり 此処の浅瀬に ひそみ鳴くなる

窓さきの 若木桜を かきたわめ かささぎは二羽 とまりたるかも

わが連れし 犬に戯るる かささぎの 声はしどろに 乱れたるなり

呼びかはす 雉子の声や をちこちは 小松ばかりの 山まろうして

二声を つづけて啼けば 向ひなる 山のきぎすも 二声を啼く

呼びさます 鵲の声 きこゆなり 今朝も晴れたらむ 窓さきの木に

ときめきし 古しのぶ この国の ふるきうつはの くさぐさを見つ

咲き盛る 芍薬の花は みながらに 日に向ひ咲けり 花の明るさ

長安寺の 庭の芍薬 さかりなり 立ちよればきこゆ 花の匂ひの

芍薬の なかば咲きたる まだ咲かぬ とりどりの花に あそぶ蟻蟲

美しき 雀なるかな 芍薬の 真盛りの園の 砂にあそべる

表訓寺 御堂の裏に 廻りたれば こは真盛りの 芍薬の園

麓なる 寺々の芍薬 咲きたれど 正陽寺の花は いまだ蕾める

まなかひに 聳え鎮もり たふとけれ おろがみ申す 衆香城峰

うち仰ぐ 岩山の峰に 朝日さし 起りたるかも 郭公の声

たぎつ瀬に たぎち流るる 水のたま 珠より白き 山木蓮の花