久方の 天つ少女が 住むといふ 星の都に 行かんとぞ思ふ
ものゝけの 栖むといふなる 古家の 檐端の柳 伐り捨てにけり
草枕 旅行く君を 送り来て 橋の柳の 下に別れぬ
赤染の 下著あらはに 樽揚げし 島田男に 花散りかかる
乾けるを 針にさしたる 蝶の羽の 紫さめて ほこりたまれり
菅の根の 長き春日を 言問はぬ 小鳥と我と 只向ひ居り
繪にかける からの少女が 玉垂れし 姿なつかし 片顔にして
あづま路の あづまものゝふ あともひて 富士の裾野に 御獵すらしも
夕日影 照り返したる 山陰の 桃の林に 煙立ちけり
寒山が 巻物ひろげ 拾得が 箒持ち腰に 蕪を插む圖
天地に 恥ぢせぬ罪を 犯したる 君麻縄に つながれにけり
みやこべの まがねの人屋 廣ければ 君を容れけり ぬす人と共に
御あがたの おほきつかさを はづかしめて 罪なはれぬと 聞けばかしこし
くろがねの 人屋の飯の 黒飯も わが大君の めぐみと思へ
豆も事を グンバといふと 人に聞きし 人屋の豆の グンバ喰ふらむ
人屋なる 君を思へば 眞晝餉の 肴の上に 涙落ちけり
ある日君 わが草の戸を おとづれて 人屋に行くと 告げて去りけり
三とせ臥す 我にたぐへて くろがねの 人屋にこもる 君をあはれむ
ぬば玉の やみの人屋に 繋がれし 君を思へば 鐘鳴りわたる
君が居る まがねの窓は 狭けれど 天地のごと ゆたけくおもほゆ