和歌と俳句

正岡子規

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フォルモサの 高砂島に 君行かば 島人さびて バナナくふらん

フランスの パリス少女は 日の本の 扇手に持ち 君を待つらん

日の本の しこの少女の 居るといふ シンガポールを 過ぎて行くらん

くろがねの 人屋をいでし 君のために 筍鮓を つけてうたげす

山吹の 花咲く宿に 萬葉の 歌の講義の 会を開きぬ

常臥の 病のひまの つれづれに 土をつぐねて 人をつくりぬ

土がたの 人造りゐる かたはらに 盆に載せたる さわらび十把

ともし火の もとに伏しゐて 土くれに 六ひらの花を あまたゑりたり

蓮がたの うつはのへりに 附けそへし 蜻蛉の尻を 曲げて手となす

かな網の 大鳥籠を つくろひて 小鳥を入れん 明日の朝待たる

君ガ家ノ 庭ニ置キタル 水盤ノ 水ハ換ヘズカ 孑孑ワカズカ

君ガ家ノ 庭ノ植木ヲ 皆抜キテ 蕎麥ノ畠ヲ ツクラバヨケン

君ガ庭ノ ソクヘノキハミ 楓植ヱ 雄鹿雌鹿ヲ 放タバヨケン

君ガ庭ニ 老木ノ杉ヲナミ 植ヱテ 奥ニ稲荷ヲ 祭ラバヨケン

君ガ庭ニ 茶店團子屋 コシラヘテ 園遊歌會 開カバヨケン

歌ヨミテ オクレト君ガ イヒシ故ニ 歌ヨミテオクル 歌ヨミテカヘセ