和歌と俳句

加賀千代女

花よりも名に近づくや福寿草

福寿草まだ手もをけぬ所より

万歳のロや真砂は尽るとも

万歳やもどりは老のはづかしく

ななくさや我は背戸にてよみ尽し

七くさや都の文を見る日数

七くさや欲にもけふのよくばかり

七草に似合ぬものは蕪かな

七草やあまれどたらぬものも有

七草やつれにかえ合ふ草もあり

七草や三つよつふたつひと所

七草や三つ四つふたつ置所

七草や雪に花香も添ながら

七草や雪を払へばそれでなし

七草や翌からは目の地につかず

松のしらへことに子の日の夕哉

風の音に引ぬ子の日を祝ひけり

もすそにもつくものならば鳳巾の糸

吹々と花に欲なし鳳巾

けふまでの日は今日捨て初かすみ

また顔の空へはおもし初霞

もれ出る山又山やはつ霞

烏一つふたつも見るや初かすみ

初かすみたつや二見のわかるほど

松竹とまたわかるなり初霞