川せみの御座と見へたり捨小舟
湯上りの庭下駄軽し夏の月
凌霄や長者のあとのやれ築土
藁屋根に百合の花咲く小家かな
昼顔や甘蔗畑の汐曇り
粽解いて道光和尚に奉らむ
馬頭初めて見るや宍道の芥子の花
武者窓は簾下して百日紅
ひなげしや夜ごと夜ごとのあけやすき
雲遠し穂麦にまぢる芥子の花
芥子あかしうつむきて食ふシウマイ
わが指の白きを見守れば時鳥
羅帷一重燭一盞や時鳥
金を錬る竃も古りて蚊食鳥
蝙蝠に一つ火くらし羅生門
人妻となりて三とせや衣更へ
萍や行く方さだめぬ恋なれど
かはたるる靴の白さやほととぎす
明易き夜をまもりけり水脈光り
朝焼くる近江の空やほととぎす
麦刈りし人のつかれや昼の月
蛇女みごもる雨や合歓の花