曇天に圧されて咲ける牡丹かな
水槽に寒天浮いて夕さりぬ
つけ止んで灯入りの月や蚊食鳥
蟻地獄隠して牡丹花赤き
五月雨や枇杷つぶら見ゆ藪に住む
五月雨に鬼菱せめぐ水の面かな
もどらずよ挽木の反も短夜は
うどんげの蝶となる間も明易き
ほととぎす壁にぬりこむ藻のいきれ
蚊帳の目にかがる風景も朝焼けて
水打てば御城下町のにほひかな
暁闇を弾いて蓮の白さかな
天竺に女人あまたや蓮の花
バナナ剥く夏の月夜に皮すてぬ
松風や紅提灯も秋どなり
残る夜や舟に蓮切る水明り
短夜や泰山木の花落つる
大象も花笠したる祭かな
炎天にはたと打つたる根つ木かな
青蛙おのれもペンキぬりたてか
瓦屋根にも毛氈干して御虫干
群れ渡る海豚の声や梅雨の海