花ざくら爛漫として人飢うる
うぐひすのこゑのほがらにひと飢うる
旦よりひもじくて草芳しき
ひもじくておとなしき子や落椿
落椿子のひもじきは堪ふべしや
餓鬼となるわが末おもふ夕霞
永き日を妻と暮らしつ子は措きて
春の夜の浴室かぐはし妻のあと
妻も飲むあまくつめたき春の酒
おぼろ夜の妻よ古りつついや愛し
一片の妻と欠き合うチョコレエト
春はあけぼの妻の寝顔をまなかひに
浪華より子等来たり妻母となる
リラの香のありと思ひつつころぶしぬ
にほふリラひとのみじろぎにもにほふ
米櫃に米尽きて春立ちにけり
春の雪妻はひもじさをふと言ひけり
春の雨ひびけりいつの寝覚にも
春水やよき妻獲たる古男
手に貰ひ紅梅の枝のたのしさよ
紅梅の八重咲きつくす瑠璃天に
紅梅を仰ぎてひさし他の門
板の塀古りてしづけし春の草
あたたかき試歩をとどむる雪柳
ゆく春や朝空照りてシユウベルト