山本荷兮
曙や伽藍伽藍の雪見廻ひ
きさらぎや廿四日の月の梅
しんしんと梅ちりかかる庭火かな
川原迄瘧まぎれに御祓哉
塩魚の歯にはさかふや秋の暮
陽炎や取つきかぬる雪の上
家買てことし見初る月夜哉
秋のくれいよいよかるくなる身かな
蔦の葉や残らず動く秋の風
麦ぬかに餅屋の見世の別かな
春めくや人さまざまの伊勢参り
鶯や竹の古葉を踏み落し
>面櫂やあかしの泊り郭公
秋ひとり琴柱はづれて寐ぬ夜かな
あらたまる秋も目出たし巻暦
初秋や初瀬の寺の朝のさま
秋の日やちらちら動く水の上
月は山けふや近江のあめの魚
水枯や石川ぬらす初しぐれ
あたらしき茶袋ひとつ冬籠り