和歌と俳句

古今和歌集

賀歌

在原しげはる
鶴亀も千歳ののちは知らなくに あかぬ心にまかせはててん

素性法師
万世をまつにぞきみをいはひつる 千歳のかげにすまんと思へば

内侍藤原満子
春日野わかなつみつゝ よろづよをいはふ心は神ぞ知るらん

山たかみくもゐに見ゆる桜花 心の行きて折らぬ日ぞなき

めづらしき声ならなくに 郭公 こゝらの年をあかずもあるかな

住江のまつを秋風吹くからに こゑうちそふる沖つしらなみ

千鳥なく佐保の河ぎり立ちぬらし 山のこのはも色まさりゆく

秋くれど色もかはらぬときは山 よそのもみぢを風ぞかしける

白雪のふりしく時は み吉野の山した風に花ぞちりける

典侍藤原よるかの朝臣
峯たかき春日の山にいづる日は くもる時なくてらすべらなり