和歌と俳句

加藤楸邨

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は老いて人間の目のごとく見る

あきかぜやわが胸中のさるをがせ

あるじ今石となりをり鵙ばかり

満月や猫の子乳の匂ひ持つ

驚きし鴨の声にて闇は満つ

弱きものは死ぬか去るかと鵙はをり

色なき火赤き火となる秋の暮

鶲来と目くはせしをり道祖神

柚子匂ふ視野の一端海へ延び

ふきやめし旅の鬼灯何おもふ

ねむりたまへ眠れぬ刺は山帰来

霧は流れて静かな深さ馬の耳

風邪惹きの猫の寝息のかなしけれ

人間をやめるとすれば冬の鵙

初鶏や家中柱ひきしまり

負け独楽のつきささりたる深雪かな

近よれば土が匂へり飾り臼

冬柿は顔のごとしやひぐれどき

流れ藻とならざりし裳の冬の青

物言へばさむしと芭蕉円空に

橙にかの日の夕日今も落つ

春を待つ潮騒か世のどよめきか

生れきたりてはてなくおたまじやくしなり

枝蛙ねむしくらくら道祖神

濡れてくらがりの底くらかりき