和歌と俳句

麦の道牛飼人もいくさ経て 波郷

麦熟るる風の舟橋わたりけり 万太郎

麦は穂にくもれど光り失はず 林火

麦の穂や総身風にめぐらるる 槐太

焼殻の小会堂に没る日麦熟るる 不死男

子を抱きて麦のとがれる畦のみち 誓子

麦生より身は低くして子が通る 誓子

麦の穂に夕日を惜しみなく頒つ 誓子

あまぐものまたたゆたひて麦の穂や 万太郎

麦熟れてあたたかき闇充満す 三鬼

麦生に立つ口の周囲の黒き髭 誓子

ゆきすがる片戸の隙も麦の金 多佳子

手に拾ひ金色はしる麦一と穂 多佳子

熟れ尽し麦は痩せけりわれのごと 草城

茫茫と麦生つづけり胸の病 誓子

熟れ際に倒れし麦の熟れにけり 耕衣

曽て吾通りし麦の中黄ばむ 誓子

麦畑秘密なきまで吹き荒るる 誓子

黄麦や渦巻く胸毛授けられ 三鬼

麦熟れぬギタートレモロ練習曲 草城

若者の頭が走る麦熟れゆく 三鬼

明日か刈る島の麦畑相向ふ 秋櫻子

麦生何起りしや誰か逃げ誰か追ひ 誓子

鉢巻が日本の帽子麦熟れたり 三鬼

麦の穂の陰も明るし布良の道 波郷

白昼の畝閧ュらみて穂だつ麥 蛇笏

蠅とめて島の痩麦禾ながし 波郷

麦痩せて渋民村の名もほろぶ 風生

峭然と碑の肩そびえ麦熟るる 風生

強風に飛んで麦生に幣からむ 誓子

麦熟るるの碑の文字すべて悲話 汀女