和歌と俳句

詞花和歌集

民部内侍
みやこにておぼつかなさをならはずは旅寝をいかにおもひやらまし

和泉式部
もろともにたたましものをみちのくの衣の関をよそにきくかな

源俊頼朝臣
よろこびをくはへにいそぐ旅なれば思へどえこそとどめざりけれ

藤原輔尹朝臣
とまりゐて待つべき身こそ老いにけれ哀れわかれは人のためかは

藤原道経
かへりこむほどをば知らず悲しきはよを長月の別れなりけり

津守国基
六年にぞ君はきまさむ住吉のまつべき身こそいたく老いぬれ

一條院皇后宮
あかねさす日に向ひても思ひいでよ都は晴れぬながめすらむと

法橋有禅
別れ路の草葉をわけむ旅衣たつよりかねて濡るる袖かな

玄範法師
またこむと誰にもえこそ言ひ置かね心にかなふ命ならねば

寂昭法師
留まらむ留まらじともおもほえずいづくもつゐのすみかならねば

僧都清因
ふたつなき心を君にとどめ置きて我さへわれに別れぬるかな

太皇太后宮甲斐
暮れはまづそなたをのみぞ眺むべき出でむ日ごとに思ひをこせよ

よみ人しらず
東路のはるけき道を行きかへりいつかとくべきしたひもの関

權僧正永縁
たち別れ遙かにいきの松なれば恋しかるべき千代のかげかな

くぐつなびく
はかなくも今朝の別れの惜しきかないつかは人をながらへてみし