関白前太政大臣忠通
あやしくもわがみやま木のもゆるかな思ひは人につけてしものを
藤原実方朝臣
いかでかは思ひありとも知らすべき室の八島のけぶりならでは
隆惠法師
かくとだに言はではかなく恋ひ死なばやがてしられぬ身とやなりなむ
大蔵卿匡房
思ひかね今日たてそむる錦木の千束もまたで逢ふよしもがな
平兼盛
谷川の岩間をわけて行く水の音にのみやは聞かむと思ひし
一條院御製
よとともに恋ひつつすぐる年月は変れど変るここちこそせね
藤原伊家
わか恋は夢路にのみぞ慰むるつれなき人も逢ふとみゆれば
左兵衛督公能
慰むる方もなくてややみなまし夢にも人のつれなかりせば
藤原惟成
命あらばあふ世もあらむ世の中になど死ぬばかり思ふこころぞ
大納言成通
よそながらあはれと言はむことよりも人づてならでいとへとぞ思ふ
覚念法師
恋ひ死なば君はあはれといはずともなかなかよその人やしのばむ
賀茂成助
いかばかり人のつらさを恨みまし憂き身の咎と思ひなさずは
藤原頼保
いかならむ言の葉にてか靡くべき恋しといふはかひなかりけり
浄蔵法師
わがためにつらき人をばをきながら何の罪なき世をやうらみむ
平兼盛
忘るやとながらへゆけど身にそひて恋しきことは遅れざりけり
よみ人しらず
年をへて燃ゆてふ富士の山よりも逢はぬ思ひは我ぞまされる
よみ人しらず
わびぬればしゐて忘れむと思へども心弱くも落つるなみだか
よみ人しらず
思はじと思へばいとど恋しきはいづちか我が心なるらむ
能因法師
こころさへむすぶの神やつくりけむ解くるけしきも見えぬ君かな
前大納言公任
ひとかたに思ひ絶えにし世の中をいかがはすべきしづのをだまき