万葉集・巻第二・挽歌
明日香川四我良美渡之塞益者進留水母能杼尓賀有真思
明日香川しがらみ渡し塞がませば進める水ものどにかあらまし
万葉集・巻第二・挽歌
明日香川明日谷将見等念八方吾王御名忘世奴人目尓戀而池尓不潜
明日香川明日だに見むと思へやも我が大君の御名忘れせぬ
万葉集・巻第三・挽歌
草枕羈宿尓誰嬬可國忘有家待真國
草枕旅の宿りに誰が夫か国忘れたる家待たまくに
万葉集・巻第三・挽歌
隠口能泊瀬山之山際尓伊佐夜歴雲者妹鴨有牟
こもりくの泊瀬の山の山の際にいさよふ雲は妹にかもあらむ
万葉集・巻第三・挽歌
山際従出雲兒等者霧有哉吉野山嶺霏■
山の際ゆ出雲の子らは霧なれや吉野の山の嶺にたなびく
万葉集・巻第三・挽歌
八雲刺出雲子等黒髪者吉野川奥名豆颯
八雲さす出雲の子らが黒髪は吉野の川の沖になづさふ
秋山之黄葉乎茂迷流妹乎将求山道不知母
秋山の黄葉を茂み惑ひぬる妹を求めむ山道知らずも
黄葉之落去奈倍尓玉梓之使乎見者相日所念
黄葉の散りゆくなへに玉梓の使を見れば逢ひし日思ほゆ
去年見而之秋乃月夜者雖照相見之妹者弥年放
去年見てし秋の月夜は照らせども相見し妹はいや年離る
衾道乎引手乃山尓妹乎置而山径往者生跡毛無
衾道を引手の山に妹を置きて山道を行けば生けりともなし
去年見而之秋月夜者雖渡相見之妹者益年離
去年見てし秋の月夜は渡れども相見し妹はいや年離る
衾道引出山妹置山路念迩生刀毛無
衾道を引手の山に妹を置きて山道思ふに生けるともなし
家来而吾屋乎見者玉床之外向来妹木枕
家に来て我が屋を見れば玉床の外に向きけり妹が木枕
楽浪之我津子等何罷道之川瀬道見者不怜毛
楽浪の志賀津の子らが罷り道の川瀬の道を見れば寂しも
天数凡津子之相日於保尓見敷者今叙悔
そら数ふ大津の子が逢ひし日におほに見しくは今ぞ悔しき