和歌と俳句

源俊頼

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たまゆかの おましのはしに はたふれて こころはゆきぬ きみなけれども

あふことは 夏野にしげる こひ草の かりはらへども 生ひむせびつつ

まどろむに こひしきことの なぐさまば ねざめをさへは うらみざらまし

ねらひする ゐなのしばやま ふぶきして たえてまつべき ここちこそせね

けふよりは 衣とともに つれもなき 人のこころも かはらましかば

来てもまた 帰るあしたの 悲しさに 来ぬをうしとも 思はざりけり

つららゐて しげるみぎはの さむしろに をれふすあしの ねをのみぞなく

わするるに こころのほどの みえぬれば かねてつらさの ますかがみかな

こひしとも いささはいはじ 年をへて うきからひとを おもひいづるに

かきやりし 人のたもとの 恋ひしさに いくたびかみを ふりこしつらむ

たまくしげ 二見の浦に すむちどり ただあけくれは ねをのみぞなく

うたたねの 夢路にみえし あふことを 春の夜とだに おもはましかば

いとどしく ものおもひをれば やまがつの すげかるさはに たづさわぐなり

やまとりの はつをのかがみ かげふれて かげをだにみぬ 人ぞ恋ひしき

かはりゆく ひとのこころは つらからで わすらるる身を うらみつるかな

あはれなり こひにてよをば つくせとや 身はよどかはの 底にすまねど

あしきたの のさかの浦の うつせ貝 いもせそなへて いくよへぬらむ

あめふりし ひはあやにくに こしものを こはたれなれや おとづれもせぬ

ゆふがほの しげみにすだく くつわむし おびただしくも こひさけぶかな

やへふける まやにもあめは もるものを なほわが恋の ひまなかるらむ

あきかぜに すすきのなまず おもひいでて ゆきけむ人の ここちこそすれ

もろこしと なにおもひけむ さとられぬ たまになきけむ 人の涙を