和歌と俳句

源俊頼

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ちぎりありて わたりそめなば 隅田川 かへらぬ水の こころともがな

恋ひしさに たえずなかるる わがそでの なみだを人の こころともがな

金葉集・恋
夜とともに 玉散るとこの 菅まくら 見せばや人に 夜半のけしきを

新古今集・恋
きみ恋ふと なるみの浦の はまひさぎ しをれてのみも 年をふるかな

したのおひの いひまどはせど いきもあはす みじかかりける わがすぐせかな

くちぬらむ 袖ぞゆかしき わかこまの つまづくたびに みをしくだけば

ははきぎは おもてふせやと おもへばや ちかづくままに かくれゆくらむ

おほかたは おもひたえなむ いけのあまの つりのうけひく ことしなければ

へだてつる ころもの関の かたければ うらみてぞふる 人のこころを

わび人は 風のしたなる くずなれや よなよなくれど かへりのみする

おもへただ たもとはつゆに そぼぬれて たちやすらひし 夜半のけしきを

はるかなる くもゐをわたる 雁がねも つひにはさはに おるとこそきけ

みづのうみと おつるなみだは なりにけり あふべきしほも なきときくより

とかりする さつをのゆづる うちたえて あたらぬこひに やまふころかな

いひそめし 言葉と後の こころとは それかあらぬか いぬかからすか

わかくさを ただかりそめに 見し日より つかねもあへぬ ものをこそおもへ

うらむるも 恋ひしといふも ききとけば ひびきとこゑと 水と氷と

よもよもと 頼めし君が 言の葉は あきたちぬれば かれがれになる

おもひやる こころやちぢに さそふらむ たのめぬたびに 君がきませば

わぎもこが すかたの池を みつるより なみのたちゐに ものをこそおもへ

わすれめや 涙にそめし くれなゐの やしほの衣 色しあせすば

たにがはの みかけにつくる まろすげも くもゐるみねの いはねをぞおもふ