牡丹散つて心もおかず別れけり
浅井戸にそつとすすぐや杜若
麻の香のくるも涼しや寺の庭
翁にぞ蚊屋つり草を習ひける
青梅にうはの空なる人恋し
かまきりの虚空をにらむ残暑哉
巻つくす枕絵甘し秋のくれ
夜寒さや舟の底する砂の音
鰯雲鯛も鮑も籠りけり
秋かぜや息災過て野人也
竹売て酒手にわびむ秋時雨
朝寝する障子の隙も霧の山
うすぎりや白鷺眠る湯のながれ
秋海や湿気の深き窓の下
初汐や夜る夜るつのる山颪
子を抱て湯の月のぞくましら哉
立ちながら往生申かかしかな
九十九の鼻かけ猿に新酒哉
追ひあげて尾上に聞かむ鹿の声
山がらや細谷川の丸木橋
馬かりて燕追行わかれかな
粟の穂にあそべ小鳥の渡りかけ