和歌と俳句

木槿 むくげ

いつまでも吠えゐる犬や木槿垣 虚子

白木槿蘂の紫うつりをり 立子

朝月のこる木槿が咲いてゐるながれ 山頭火

避暑町の少しさびれぬ花木槿 たかし

雨落つる空がまぶしき木槿かな たかし

白秋
晝の野に 子らと出て來て かへり見る 我家にしあれや 白木槿の花

右は海へ左は山へ木槿咲いてゐる 山頭火

茂吉
白槿咲きしばかりの清しきを手に取り持ちて部屋に帰り来

路草にむかひて萎む木槿かな 耕衣

みちのくの木槿の花の白かりし 青邨

霧籬木槿は花を尽くしけり 麦南

鎌倉の辻の多さよ木槿垣 立子

日の出待つや木槿いつせいに吹かる中 林火

道すがらうかぶ木槿や徒労ばかり 波郷

花木槿一輪さして兄はゐる 青邨

木槿咲く籬の上の南部富士 青邨

曲家の籬木槿の咲きみちて 青邨

貰ひ乳子が遠くなる木槿垣 綾子

白木槿嬰児も空を見ることあり 綾子

隣まだうれぬ空地の木槿かな 万太郎

白木槿乙女峠はすぐ雲に 悌二郎