灯のいろのしづけき宵ぞ絵燈籠 秋櫻子
燈籠に母思ふ事しげしげと かな女
母に吊る盆燈籠を消さじとぞ かな女
燈籠に醜老の顔照さるゝ 誓子
燈籠に仕ふる沙彌の目鼻かな 夜半
燈籠のおのづからなる長尾かな 夜半
秋草の一つは消えし燈籠かな かな女
燈籠に荷だくさんの狐かな 青畝
日中の燈籠の尾に立ち添ひぬ 槐太
燈籠や仏づとめに子のはべる 月二郎
たくさんの墓燈籠をともすもの 夜半
大いなる燈籠の手の影法師 夜半
向きあうておなじ燈籠草の宿 悌二郎
消えてゐし灯のもどりくる燈籠かな 夜半
白紙を張りあましある燈籠かな 夜半
灯籠にしばらくのこる匂ひかな 林火
盆燈籠真白き房に風見えて 淡路女
おもひでのかなしき燈籠ともしけれ 万太郎
燈籠に立つ影に寄る影のあり 亞浪
灯籠は粗末に僧は大智識 素十
山蛾食ひ切子ふたたび明もどす 多佳子
山霧にしめりて明き燈籠かな 麦南
盆燈籠眠りに落ちて坐りゐる 花蓑
孤つ家の桐葉がくりぬ盆燈籠 蛇笏
座蒲団のならび燈籠灯くひと間 素逝