梅茶屋の霰まろべるふとんかな
背戸巌に尼が膳椀しぐれけり
森外は雪ぞちりきぬ落葉掻
風邪の子のほつれ毛かぶり負はれけり
雪墜ちし一つ時明き火燵かな
がうがうと深雪の底の機屋かな
雪垣にしづめる鐘や永平寺
ひとつ家の雪をおろせる女かな
杖あげて一樹をよぎるスキーかな
懐炉ふく一人の顔や寒念仏
寒念仏倒れし橇に灯あげをり
訪ふ人の焚きつげる火や冬の滝
一甕の華たくはへや冬籠
母織れる窓の下なる雪あそび
すぐ消えし寒鮒釣の焚火かな
時雨傘ゆき交ひながらさされけり
湖の舟揚げられてある冬田かな
絵葉書をかけて閉せり落葉茶屋
時雨傘とどけこみあふ芝居かな
鴨を待つ一服の火を洩らしけり
永平寺門前茶屋の雪がまへ
布施ごとに雪ふかみゆく寒念仏