皆吉爽雨
開きたる炉にはしらする切火かな
雉子売の顔出す炉辺の屏風かな
炉辺たのし酒の薬罐も煤ふかく
炉辺たのし夜食のものを朴の葉に
干竿をわたせる炉辺の屏風かな
炭出しにゆくつぶやきは又雪か
滝壺をしりぞきめぐる深雪かな
銅蓮の掘られて噴ける深雪かな
雪穴をくぐり嗽ぎし詣でかな
雪卸手ふれり道を返へしけり
行きちがふ顔もあげずに雪眼かな
葬り火も人もあらはに枯野かな
山茶花のしぐるる花のみな平ら
町さむく城山いまも刻の鐘
大山の鳥居を落しくるスキー
雁列の突つたちしづむ枯野かな
巨椋池なりし枯野を見に舸子と
峰の灯は千早道場凍豆腐
鴨鍋や月失せて濃き近江富士
鴨の陣ただきらきらとなることも