和歌と俳句

源頼政

まつになほ 残りやしけむ 藤の花 かへる心に かけてしものを

藤の花 心にかけば またもやと 待つことのみぞ ときはなりける

思ひきや 雲のかけはし 下りしより しもがしもにて あらむものとは

いたづらに 年もつもりの はまにおふる まつぞ我が身の たぐひなりける

おぼつかな 谷より出づる うぐひすも そこにありとは きかするものを

こたへせぬ み山隠れの 山彦の 思ふ心を 知らずやあるらむ

こたへばぞ そこともきかむ 山彦の 思ふ心は いかが知るべき

いろいろに 思ひ集むる 言の葉に 涙の露の 置くもありけり

さびしさを とふべきことと 思ひける 人の心を ことし知りぬる

さびしさは さやはありしと 人知れず 嘆きしことは 今年のみかは

むかしわが ながめし月の 入りしより よにふる路は 踏み違へとや

頼むとも また来む年の 春までは 梅のえ待たじ 残り無き身は

色も香も 心に深く 染めつれば こずゑ遥かに 君ぞ見るべき

たちばなは 花の咲くまで ありけるに 老いぬる身こそ とまるまじけれ

時すぎて なほ盛りなる たちばなを をる人の身に よそへてぞみる

われそまつ−いつへきみちに−さきたてて−したふへしとは−おもはさりしを

遅れじと 契りしことを まつ程に やすらふみちも 誰ゆゑにそは

くもゐまで みなのぼるなる たづの子は いかなる巣より たちはじめけむ

ひきつれて くもゐにのぼる たづの子は み熊野にすむ しるしとを知れ

音にのみ きききかれつつ すぎすぎて みきなわれみき その後はいかに