和歌と俳句

源頼政

こひこひて みきわれ見えね その後は しのびぞかぬる 君はさにあらじ

朝夕に なれし昔の ももしきや 花の便りに 見るぞ露けき

なれにけむ 昔をしのぶ 袖の上に 落つる花もや 露けかるらむ

みとせまで 君に先立つ 身なれども まことの道に 入り遅れぬる

かはりゆく ひつじのあゆみ ちかければ 急ぎ入りぬる 道と知らなむ

やるかたに 筆に涙ぞ 零れぬる わがあらばこそ 書きも交はさめ

零るらむ 涙にたぐふ 水茎を わが眼の前へに かけてこそ見れ

山の端に 入りなむとする 月影を 我によそへて あはれとも見よ

千代までと 君によそへて 見る月ぞ 山の端かけて 入れずもあらなむ

ありしよの 君やかたみに とまるらむ まつ見しままに 昔おぼえし

よもかはり 姿もあらぬ 君なれば 我も昔の かたみとぞ見し

程もなき かしらの雪を もちながら 先に消ゆるを あはれとぞ思ふ

すゑの露 もとの雫は けふならず 憂き世の上と 見るぞかなしき

君来ずば 誰に見せまし 津の国の 難波わたりの 秋のけしきを

心ある 君ましければ ともにこそ 難波わたりの けしきをも見め

そこ清み 掬ぶかめゐの 水すみて こころの垢を すすぎ果てつる

手に掬ぶ かめゐの水は 西の海も わたす心を すすめざらめや

西の海に わたす心の 月の舟 かめゐよりこそ 澄みのぼるらめ

わが心 かめゐにすめど 西へ行く 月の舟にそ のりかへりぬる

もろともに いささはゆかむ 極楽の 門むかひなる ところなりけり