和歌と俳句

うすもの 羅

羅の胸に懐紙の透き見ゆる 虚子

かぐろくてけむりのごときうすごろも 草城

むなもとのたをりぞしるきうすごろも 草城

うすごろもはだへにそへばきえてなき 草城

うすごろもはだのひかりぞかすかなる 草城

うすものやよのおぼろめくはだのてり 草城

羅に恙を堪へて生きにけり 淡路女

うすものを著て前生をおもひけり 万太郎

羅の商人通る日本橋 みどり女

羅に衣通る月の肌かな 久女

羅の乙女は笑まし腋を剃る 久女

夜の軽羅硬きナプキンを手にひらく 多佳子

あながちに肌ゆるびなきうすごろも 蛇笏

窶る婦の白眼にしてうすごろも 蛇笏

羅や青無花果は太り居り 汀女

羅の肩をおほへる稲光 汀女

うすものを着て雲の行くたのしさよ 綾子

うすもののみえすく嘘をつきにけり 万太郎

薄物の肩透きゐるが帰還兵 知世子

野をゆくや薄物くろき母のあと 信子

羅の双肩怒る衣紋竹 風生

羅や人悲します恋をして 真砂女

うすものや月を見て佇つ風の中 万太郎

うすものの立ちて総身透かんとす 爽雨

羅の二人がひらりひらり歩く 立子

蘿を着て遠方の不幸かな 双魚

羅に北の小窓の風貰ふ 汀女

蘿のうらが湿りて子をわたす 双魚

行きまじる軽羅の街は薔薇粧ふ 汀女