北原白秋

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朝の餉の 堆朱の膳に 散らひ来る 粉雪は松の 揺りにたるらし

女童は 雛祭るとぞ 言問ひて 朱の氈など 部屋に取りに来

女の子ろに 傾ぐ思は 積む雪の 枝しづりつつ 春待ちがてぬ

楢山に 菫咲くとふ その色の どれが菫ぞ 見つつわかぬに

乾反葉に まじるを おぼつかな 陽炎をのみ 見つつあやなし

日方とよ 鶲啼くなり 玉蘭の まだ蕾なる 枝の揺れ見よ

玉蘭は 空すがすがし 光發す 一朝にして ひらき満ちたる

木高きは 現あらぬか 玉蘭の 花多にして みしろ幽けき

春昼は あやかしふかし 玉蘭の 下照る篁子 影二人笑む

観るほどは 敢なかるらし 日を経りて 物のあいろの 暗くなりゆく

日の光 月のごときに 玉蘭の 花さゆれつつ あるが清しさ

我が眼には 月の色なる 日の照りを 雀歩けり 庭片寄りに

玉蘭は 花うやうやし 散るとして 散りつつ冴えぬ その下枝に

玉蘭は 木末より散り やすけらし 下枝の花ぞ 日に照らひつつ

土に帰る 時なりけらし 玉蘭の いや澄みまさる 散りがたの花

花落ちて ただちに萌ゆるか 玉蘭の 立枝の芽ぶき 雷に勢ふ

和歌と俳句