金葉集・夏
夏衣たちきる今日は花櫻かたみの色をぬぎやかふらむ
金葉集・冬
袖ひちて植ゑし春より守る田を誰にしられて狩に立つらむ
金葉集・恋
君こふる心は空に天の原かひなくてゆく月日なりけり
金葉集・恋
むばたまの夜の夢だにまさしくは我が思ふことを人に見せばや
詞花集・賀
あかでのみ帰るとおもへば櫻花をるべき春ぞ尽きせざりける
新古今集・春
知るらめやかすみの空をながめつつ花もにほはぬ春を歎くと
新古今集・雑歌
定めなき 名には立てれど 飛鳥川 早く渡りし 瀬にこそありけれ
新古今集・雑歌
袖のうら波吹きかへす秋風に雲のうへまですずしからなむ
新勅撰集・春
ふくかぜに みだれぬきしの あをやぎは いとどなみさへ よればなりけり
新勅撰集・恋
身のうへも ひとのこころも しらぬまは ことぞともなき ねをのみぞなく
新勅撰集・恋
ありしより みだれまさりて あまのかる ものおもふ身とも きみはしらじな
新勅撰集・雑歌
なきひとの ことのはうつす みづぐきは かきもやられず そでぞぬれける
新勅撰集・雑歌
ゆけばあり ゆかねばくるし しかすがの わたりにきてぞ おもひたゆたふ
続後撰集・春
うぐひすの うつれるやどの 梅の花 香をしるべにて 人は訪はなむ
続後撰集・冬
氷ぬる 池のみぎはは 水鳥の はかぜに浪も さわがざりけり
続後撰集・恋
あひみての 後さへものの かなしくば なぐさめがたく なりぬべきかな
続後撰集・恋
わびつつも この世はへなむ わたり河 後のふちせを 誰にとはまし
続後撰集・恋
秋といへど 色もかはらぬ 松山は たつとも浪の こえむものかは
続後撰集・雑歌
わがごとや 秋ふけがたの きりぎりす 残りすくなき ねをば鳴くらむ
続後撰集・雑歌
われよりは 久しかるべき 跡なれど しのばぬ人は あはれともみし