人麻呂
たまほこの みちゆきつかれ いなむしろ しきてもひとを みるよしもがな
よみ人しらず
ゆふされば みちたどたどし 月まちて かへれわがせこ そのまにもみむ
額田王
きみまつと わがこひをれば わがやどの すだれうごかし あきかぜぞふく
壬生忠岑
もろくとも いざしらつゆに 身をなして きみがあたりの くさにきえなん
躬恒
わびぬれば いまはとものを おもへども こころしらぬは なみだなりけり
采女明日香
みかさやま きてもとはれぬ みちのべに つらきゆくての かげぞつれなき
右近
あひ見ずは ちぎりしほどに おもひいでよ そへつるたまを 身にもはなたで
式部教敦慶親王家大和
こひしさの ほかにこころの あらばこそ ひとのわするる 身をもうらみめ
孚子内親王
つゆしげき くさのたもとを まくらにて きみまつむしの ねをのみぞなく
中務
身のうへも ひとのこころも しらぬまは ことぞともなき ねをのみぞなく
中務
ありしより みだれまさりて あまのかる ものおもふ身とも きみはしらじな
二條太皇太后宮大弐
かぜふけば そらにただよふ くもよりも うきてみだるる わがこころかな
二條太皇太后宮大弐
あらじかし このよのほかを たづぬとも なみだのそでに かかるたぐひは
周防内侍
ひとしれぬ そでぞつゆけき あふことの かれのみまさる やまのかげぐさ
返し 大納言忠教
おくやまの したかげぐさは かれやする のきばにのみは おのれなりつつ
權中納言俊忠
みしまえの かりそめにさへ まこもぐさ ゆふてにあまる こひもするかな
前関白道家
なみだがは になわのそでに せきかねて ひとのうきせに くちやはてなん
前関白道家
うしとおもふ ものからぬるる そでのうら ひだりみぎにも なみやたつらん
侍従具定母
ほしわびぬ あまのかるもに しほてれて われからぬるる そでのうらなみ
前大納言隆房
あまのかる みるをあふにて ありしだに いまはなぎさに よせぬなみかな