CFD例

(1) 金属薄膜形成 : 化学流体析出法 (Chemical Fluid Deposition:CFD)

 金属有機錯体(銅ヘキサフルオロアセチルアセトン:Cu(hfac)₂)を15MPaの超臨界CO₂中に溶解させ、ウエハ表面温度が200℃に加熱された成膜装置(参考:右図)に供給すると共に水素を還元ガスとして供給することにより、シリコンウエハ表面で銅の成膜 (Cu(hfac)₂+H₂→Cu+2Hhfac)が行われます。この結果、優れた段差被覆性と埋め込み性が確認されています。これは、超臨界CO₂が高い拡散流束をもち、高密度性がCVDと異なる吸着モードを発現させ、その結果、高速堆積や微細選択堆積が実現されたから と考えられています。


NSP試験装置フロー図

(2) 電解めっき:超臨界ナノプレイティング(SNP)

 超臨界CO₂は電解質溶液と混合しないが界面活性剤を添加し乳濁化させ、エマルジョン状態で電気化学反応を行うことにより電気めっき反応を極めて制御性が高く効率的に行うことができる。この新規めっき反応を曽根らは超臨界ナノプレイティング(SNP) と 命名し、実用化開発を進めました。めっき液(硫酸ニッケル、塩化ニッケル、ホウ酸系)に対して、1wt%界面活性剤(ポリエチレンオキシドアルキルエーテル)を加え、陽極にニッケル板、陰極に真鍮板を左図のように高圧容器内に設置し、323K、10MPaで撹拌し、2Vで電圧が 印加されました。この結果、ピンホールがなく、結晶粒の微細化、平滑化(基板面粗度32nm時に20nmにレベリング)、高硬度(常圧めっき550Hvに対し700Hv)化されたニッケル被膜が得られています。

NSP反応モデル図

 金属の析出反応と同時に発生する基板上の水素気泡が孔状のピンホール欠陥などの原因の一つですが、発生水素気泡が超臨界CO₂に相溶し速やかに消失すると共に反応点に存在する不純物に対する高密度・高浸透性の超臨界CO₂による洗浄効果により、ピン ホールやクラックの発生が抑えられるためと考えられています。SNP反応場では、電解質溶液中に二酸化炭素相が分散して流動しており、陽極とめっき液が接触している界面(左図)では、結晶核が発生しているが、二酸化炭素相が接触している場所では核発生しない。一方、 陰極表面に接触している二酸化炭素相は速やかに離脱し、同時に他の場所に二酸化炭素相が接触します。めっき反応で核発生し結晶成長している場所に、この二酸化炭素相が接触すると一時的に結晶成長は停止し、この結果、結晶が微細化すると考えられています。水素気 泡の消失によるピンホール抑制やボイド抑制も二酸化炭素相が分散した特異な電気化学反応場に起因していると考えらます。

NSP実施例

 このSNP法を半導体銅配線に応用したところ、微細凹部の埋め込み不良やシード層溶出によるめっき不良などが起こりました。そこで、銅イオン濃度を過飽和にするために、SNP反応場に銅微粒子を導入すると、右図に示すように直径300mm半導体用埋め込みテストチップで、 細孔直径60nm、深さ300nmの細孔を欠陥無しで銅が埋め込まれたことが確認されました。銅微粒子を添加しない従来法では金属結晶の微細化が観測されましたが、本発展法(M-SNP法)では、埋込穴内部で銅はボトムアップ成長(底面からの一次元成長)して(111)面に配向した単一 結晶粒として埋め込まれたと考えられています。  (本項の図は、曽根正人氏のご厚意で御提供されたものを加工しています @ 2014年)